toujinomichiの日記

酒造りの四方山話

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

黄麹菌の役割

黄麹菌とは蒸米に麹菌を繁殖させて酵素を生成したものです。この酵素の力を利用してブドウ糖やタンパク質を分解してできるのが清酒です。麹菌は空気中の酸素を必要とする微生物ですので、醪の中では生きていけませんが、麹から造られた酵素は残存してますの…

製成・貯蔵について考える

清酒の製造には、上槽した後にも滓引き濾過、調合、火入れ、貯蔵、割水、瓶詰め等せっかく良い酒が出来たとしてもその後の管理で台無しにしてしまうこともあるのです。それを防ぐための具体例を説明していきます。 上槽したばかりの清酒には、不溶性のたんぱ…

利き酒用語

利き酒とは清酒製造に働く者にとっては、日々欠かせない仕事の一部である。利き酒能力の善し悪しで消費者のニーズにあった清酒の品質に直結してしまうため、官能検査は努力して利き酒能力を向上させなければならない。そこでここでは一般的な利き酒用語の説…

酛すり唄(越後)

かつては冬場になるとどの蔵からも聞こえてきたものである酒造り唄、自分も含めて今の若い人達は、聞いたことはあっても唄える人はいないだろう。年配の杜氏さんでも歌える人は少ないでしょう。したがって酒造り唄は民謡化し、作業唄ではなくなってしまって…

生酛造り

生酛は簡単に説明すると、硝酸還元菌が亜硝酸をつくり、乳酸菌が乳酸を作り、酵母菌がアルコールを作りだす事です。ここでは家付き酵母で造る生酛の造り方を紹介していきたいと思います。 酒母米100Kgの場合なら麹米35Kg、掛米65Kg、汲水90Lとし麹は出来るだ…

酒粕の話

昔から酒は百薬の長と言われてきました。呑むべえにとってはありがたい言葉ですが、あくまでもほどほどに飲んだ場合ですよね清酒の薬効成分のほとんどは米麹に含まれていたり、醪の醗酵過程で生まれてくるものです。 清酒には適量飲酒をすることで様々な病気…

戦後の闇市場

戦後の闇市場は、其の当時の配給制度だけでは生きていくためには、栄養が不足していたために自然に出来上がった市場でした。 闇市場では米や野菜や魚、当然ながら人の集まる所にはお酒が欠かせません。 戦時中、石油不足のなか燃料用のメチルアルコールを混…

酒税

酒造りの歴史は神代の昔から語られているが,日本での酒税は酒造りに必要な酒麹売業者に課税したことが始まりらしい。 平安時代朝廷でも酒を製造していたらしいが課税はしてなかったようです。 鎌倉時代の武家社会では酒を飲んで堕落することを嫌い課税するこ…

酒蔵の天敵

清酒にとって最大の敵は火落ち菌であるが、清酒中に火落ち菌が生育すると、清酒が混濁するだけでなく香味も味も悪くなります。 清酒のようにアルコールが存在しても生育できる変わった細菌で、ヨーグルト等をつくる乳酸菌の仲間です。もともと麹を造る際にメ…

醪の話

とりあえず一般的な醪のことを書いていきたいと思います。 仕込み総米は1000kgで説明しますと、麹歩合20%で200kg、掛け米残800kgとします。汲み水歩合は125%だと1250Lとし、1000+1250=2250Lの醪ができます。 まず酒母は7%とすると70kgの酛となります。 …

速醸酒母の造り方

ここでは現代では一般的な酒母の造り方を紹介します。 普通速醸酒母はあらかじめ乳酸を添加することで、雑菌の繁殖しにくい酸性状態にして酸性に強い酵母菌を守ってあげるのです。 ここでは総米1000Kgで酒母米70kgで説明します。酒母70Kgなら水を1.1倍の77…

麹の話2

さて切り返し終了後、次の日の朝8時盛りと呼ばれる作業がありますが、これもまた切り返し同様に大変重労働な作業なのです。 朝の8時だと切り返し後16時間たつとぽつぽつと蒸米の表面に増殖した麹菌が肉眼で見えるようになります。 このとき品温は、32~33℃…

麹の話

江戸時代以前には、掛け米には白米が使用されてきましたが、麹は玄米を使用していたみたいです。(たぶん90%~99%)掛け米のみに白米を使用し、麹米には玄米を使用することを片白といい、掛け米、麹米ともに白米を使用することを諸白とよばれていまし…

酒蔵の米洗い

精米した酒造好適米を2週間ほど枯らしてから洗米していくわけですが、昔は半切り桶に冷たい水を張り足で踏んだり、手で手洗いをしたりと過酷な環境だったことはご存知のかたも多いと思います。 半切りで手で洗う場合は、10Kgごとにざるに入れて冷たい水(5℃…

酒造好適米

日本で栽培されているお米は主にジャポニカ米と呼ばれるもので、インディカ米はパサパサしてますが、日本の米はもちもちしてるのが特徴です。 お米の種類は何百種類とあるが、稲には早く成熟するものと遅く成熟するものがあります。 出穂の早い稲が早稲種、…

酒造用水

酒造りにおいて水は大切な原料であり、作業のためにも必要であり、水の良い所に造り酒屋は建てられてきたと言っても過言ではない。古くから銘酒は良い水から生まれると言われる所以である。 清酒の成分のうち80%以上は水が占めている、また清酒の原料となる…

杜氏の蔵入り

秋になり米の収穫も終る頃、杜氏は蔵人を連れて蔵元に入蔵する。 だいたいが、蔵人は当時の出身地を中心に親戚縁者などを使用してきたこともあり、酒造りの集団は同じ区域内で形成され、その地域の名称で呼ばれて、丹波杜氏、越後杜氏、南部杜氏、但馬杜氏等…

杜氏集団

最近では、日本酒ブームも重なって、酒造り体験ツアーなどがあると耳にしますが、働いている者にとっては、なぜツアー料金を支払ってまでただ働きにいく日本酒ファンがいると聞きました。 今も昔も手間ひまかけて造る高級酒は昼も夜もない蔵人の生活の上に成…

杜氏の酒造り雑学

皆さま、はじめまして現役杜氏の酒造りにまつわる話と雑学や時事ネタなど交えながらブログを書いていきたいと思います。 清酒は江戸の初期(1603~1680年頃)まで一年中仕込んでいましたが、次第に温度管理が必要なため温めるだけで温度管理のしやすい寒造り…