toujinomichiの日記

酒造りの四方山話

酒造用水

酒造りにおいて水は大切な原料であり、作業のためにも必要であり、水の良い所に造り酒屋は建てられてきたと言っても過言ではない。古くから銘酒は良い水から生まれると言われる所以である。

清酒の成分のうち80%以上は水が占めている、また清酒の原料となる仕込み水、割水用水、洗米用水、雑用水、洗瓶水等その一日の使用量は白米1000Kg当たり、10000Lから20000Lと非常に大量の水を使用するため、酒蔵を新設するには衛生的な水が豊富に、しかも安価に手に入れられることが最低条件である。

ちなみに先ほど割水用水と書きましたが、昔は卸問屋が加水してた時代に、水で薄めるなんて体裁が悪いものですから江戸の町では多摩川の水を入れてたことから割水とは言わずに「たまを入れる」と呼び現在では年寄りの杜氏しか知らないことの一つです。

ところで普通の水には鉄分が含まれていることがありますが、造り酒屋の水には鉄分がほとんど含まれていません。鉄分が多いと清酒の仕込みに向いてないのです。

良い水のある所に酒屋ありと言われてきたように、鉄分の少ない水を求めて造り酒屋ができたのです。

酒造りでは米麹を生産するのですが、このときデフェリフェリクリシンという物質ができるのですが、この物質と鉄が結合するとフェリクリシンという赤褐色の物質をつくるので、酒蔵の水には鉄分が0.02ppm以下でないとできた酒が赤褐色に変質してしまうのです。

この0.02ppmという値どれくらい小さいかというと、1億分の2という極微量ですので日本の総人口のたった二人だけ宝くじに当選するぐらいの単位なのです。

 酒蔵の水は、鉄分がなくてカリウムやリンやカルシウムが多く含まれているため醪の醗酵には大変役立っているのです。

ちなみに最近の造り酒屋によっては、昔と違い長い間に鉄分の増加してしまった蔵では除鉄装置を余儀なくされている所もあると聞いたことがあります。