蔵元見学パート2
さてそれではこれから蔵の中にご案内していきます。
こちらの上に飾ってあります、杉玉や酒林と呼ばれるものは、酒造りが始まり最初の搾りたての新酒が出来ましたよ!と近所の呑兵衛の方に知らせるご挨拶なのです。
この杉玉は作られた当時は、緑色で青々としてましたが、だんだんと夏を越して茶色くなりお酒が、熟成して来ましたよ!と言う意味があるのです。
この次は、釜場にご案内させていただきます。
こちらの釜場では、前の日に洗米して置いた酒米を蒸す作業になります。
食べるお米の場合は、洗米したらお米の2倍の水につけて炊きますが、それでは米の水分量が多過ぎて、美味しいお酒になりません。
ちなみに極たまに、若い方でご飯の炊き方を習ったことのない方が、冬場の寒い時期に湯沸かし器を使い赤いご飯が出来た話を聞いたことがございます。
これは、温かい水で洗米浸漬すると細菌が増殖して赤飯(あかめし)となってしまうのです。
見た目は悪いですが、多分一度熱殺菌されてますので、食べても問題ありません。
この現象酒造りでもあるのですが、発酵中は問題ないのですが、搾り終わった後で酒粕に色素が移りピンク色の酒粕なのでとても売れません。
そしてこちらの大きな釜の上にある甑(こしき)の中に洗米浸漬したお米を前の日に入れて置いて、翌朝スイッチ・オンをすれば、1時間程で蒸しあがります。
今では、スイッチ1つで蒸しあがりますが、昔は大変でした。
江戸時代後半には、薪から石炭に代わってきたらしいですが、どちらも本格的に火が燃えるまで時間がかかりますので、この当時の釜屋さんは朝早く3時位から起き出して甑に火を入れていたらしいです。
何故こんなに早くから仕事を始めいたかというと、朝のきれいで冷たい空気を利用したかったからなのです。
102度前後の蒸気で蒸しますので、とにかく熱いのです。
それを冷ますために朝の冷気が必要なのです。
今では、こちらの大きな機械で強制的に蒸したお米を冷やすことができますので、余り朝早くから作業をすることも少なくなりました。
そしてこちらのモッコと呼ばれる巻き上げ式ホイスト(クレーンみたいな)ですが、こちら何故か群馬式とも呼ばれるのですが、多分最初に群馬の何処かの蔵元が使用したらしいです。
このモッコが使用される前は、褌(ふんどし)1枚で甑の中に入り蒸したお米をスコップで手作業で掘り起こしていました。
若い頃やりましたが、とにかく熱いです。
もちろん汗だくになります。
それでは次に、麹室(こうじむろ)にご案内していきます。
こちらの部屋は冬場に使用してる時は、30℃〜35℃位の気温になります。
麹菌を繁殖させるのには、適温なのです。
まずはこちらの麹室に、蒸したお米を手作業で引き込みます。
それから徐々に熱を冷ましながら、だいたい35度前後になりましたら、麹菌(もやし)を蒸したお米に振りかけます。
もやしを振りかけてから30℃〜35℃を保ちつつだいたい丸々2日かけて、お米のでん粉を麹菌の力を使いながら、甘くしていきます。
ちなみにワインやビールと比べてみると分かりやすいのですが、ワインが原料のために何もしなくても甘いので、そこに酵母菌(イースト菌)が、混ざれば発酵し始めます。
ビールは大麦を加熱すると甘い麦芽になりそこに酵母菌を入れれば、発酵が始まります。
日本酒は少しだけ複雑なためにに、麹菌を利用してお米のでん粉質を糖分に変化させてから酵母菌を入れて、酵母菌に甘い糖分を食べさせてアルコールへと変換させます。
こちらのワインやビールと日本酒は、親戚とか兄弟姉妹の関係にあります。
ワインを蒸留するとブランデーになります。
ビールを蒸留するとウイスキーになります。
日本酒を蒸留すると米焼酎となるのです。
そしてワインを腐らせれば、ワインビネガーとなり、ビールを腐らせれば麦酢となります。
日本酒を腐らせれば米酢になります。
こんなに簡単には出来ませんが、発酵食品は
様々の所で親戚や兄弟姉妹関係にあるのです。
こちらの麹菌ですが、日本の国菌となります。
日本酒と醤油や味噌は主に黄麹菌を使います。
その他黒麹というは、沖縄の泡盛に使われます。
そして黒麹の変異株の白麹は、九州地方の焼酎などに使われます。
この麹菌を使用して、日本酒造りや焼酎造り、味噌、醤油、みりん、泡盛等をすべてひっくるめて日本政府は、2年程前に政府の文化庁が、ユネスコの無形文化財に登録申請をしました。
後1、2年後には、ユネスコに登録されれば、
マスコミ等で報道されると思いますので、思い出して頂ければ幸いでございます。