toujinomichiの日記

酒造りの四方山話

生酛造り

生酛は簡単に説明すると、硝酸還元菌が亜硝酸をつくり、乳酸菌が乳酸を作り、酵母菌がアルコールを作りだす事です。ここでは家付き酵母で造る生酛の造り方を紹介していきたいと思います。

酒母米100Kgの場合なら麹米35Kg、掛米65Kg、汲水90Lとし麹は出来るだけ老麹を使用すること。汲水は水道水は使用しないこと、硝酸カリウムは100L当たり5~10g添加すること。

まず最初に蒸米は30~35℃に冷ましたら、埋飯(いけめし)と呼ばれているが、半切桶の中に移します。その後5,6時間保温をして置きます。そして水麹ですが18Lずつに5等分とし、麹も7Kg分ずつの5等分とし、6℃の水麹を用意してから硝酸カリウムを1gずつ入れます。

1時間位したら、蒸米をさらに冷まします。酒母を仕込ときには、蒸米温度=(仕込予定温度ー水麹温度)×3.5+水麹温度とし、8℃で仕込なら蒸米温度は13℃とするとします。低温で仕込ことで雑菌の増殖を抑えつつ、硝酸還元作用を利用して亜硝酸の生成を促します。この亜硝酸があることでその他の雑菌が侵入したとしても酒母は守られているのです。

蔵元によりますが次の日の朝早く、櫂棒やきれいな足を使い蒸米をすり潰します。これを山卸といいますが、やり過ぎると糖化生酸を妨げるので注意すること。

その後2,3時間おきに5分から10分ほど山卸をして順次折込して最後に酒母タンクに酛寄して合併する。このとき減らしておいた水10Lを少しずつ折込時にいれる。

その後品温5℃から6℃をキープしてときどき櫂入れをしながら3日ほど待ちます(打瀬)。

このとき、品温が低いと亜硝酸と乳酸の生成が遅れ溶解不良にもなり、逆に品温が高いと亜硝酸の生成は早いが消失も早く、乳酸菌が間に合わなくなります。

仕込み後5日目に初暖気を入れますが、暖気樽に55℃から60℃のお湯を入れ酒母の中に入れ、10分置き位に場所を変えて2時間位入れ、品温を1~2℃上昇させます。このときボーメで12~13、酸度0.2以下であること。酸度が多いと亜硝酸の生成が悪くなります。

暖気は7日目までは60℃位で、8日目からは65℃、10日目からは70~75℃とする。7日目位から亜硝酸反応がでてきます。10日目までは次の日の戻り温度が10℃を超えないように品温を調節してください。

その後暖気を抜いて1時間後位してから、櫂入れをして品温の均一化をする。早く櫂入れすると酸が出にくいと言われている。

10日目過ぎから下から暖める行火方式に切り替え、品温を12~13℃とし、ボーメ16前後、酸度3.0~4.0、亜硝酸反応微弱位とし、まだ亜硝酸反応が高いなら暖気を十分効かせて14~15日頃には14~16℃とし亜硝酸反応を無くしてください。

その後毎日1~2℃上昇させ、20℃を超えてくるとぷつぷつと酵母らしき泡がでてきます。いわゆる家付き酵母です。こうなれば良いが毎回うまく行くとは限りません、このぷつぷつがでるまで品温を上げていけばだいたい27~30℃までには必ず泡がでてきますので、あきらめずに待ってください。

酵母添加より酸度も高めになる傾向がありますが、あとは普通の酒母を造るように品温経過をしていけば、問題ありません。

最後に参考として、亜硝酸反応が早く消失した場合は速やかに硝酸カリウムを添加すること、酸度が足りないときは乳酸の生成を促すために乳酸を少量だけ添加する。9日目まで亜硝酸反応があり、ボーメ16.0あれば早湧きはないと思います。

微生物の世界では、競争がなく争わない事、お互いに助け合い、支え合ってる世界で共存している。乳酸菌も酵母菌も、出番がくるまでじっと待っているのです。信じる事です。