toujinomichiの日記

酒造りの四方山話

酒蔵の天敵

清酒にとって最大の敵は火落ち菌であるが、清酒中に火落ち菌が生育すると、清酒が混濁するだけでなく香味も味も悪くなります。

清酒のようにアルコールが存在しても生育できる変わった細菌で、ヨーグルト等をつくる乳酸菌の仲間です。もともと麹を造る際にメバロン酸というものが生成されますが、そのメバロン酸が醪の醗酵途中でヘテロ醗酵型火落ち菌に変わります。

火落ち菌は低温であるときは何の変化もありませんが、温度が高くなると繁殖して白く混濁し始めます。これと似たものにタンパク混濁がありますがこれは55℃以上に加熱すると消えるものがありますので、ご注意ください。

もともと細菌類は、種類にもよりますがだいたい水と空気と食べ物の三種類が揃えば、どこにでも存在するものであり防ぐのは極めて困難なものであります。

しかしながら、どれか一つでも欠けていれば非常に繁殖しにくいのです。

例えば乾パンのように水分を減少させて長期保存を可能にしたり、真空パックのように空気を減少させることで菌の増殖を抑えているのです。

ところが液体の清酒の場合にはどれも減少させることが困難なため低温殺菌という便利な方法がありますが、これフランスのパスツールが1865 年に発明したことになっていますが、それよりも300年も前の日本で1568年には低温殺菌を使用していたと文献に残っているのですから誇るべきことである。

ちなみに60℃で10分、65℃で5分が目安になりますが近年では某県の先生の指導により吟醸等は63℃に達温したら終了とだんだん短くなってきていますが、気をつけたいところです。

しかし火落ち菌は温度管理や端桶とか洗浄殺菌のちょっとした不注意でまた出てくるので始末が悪いです。これには徹底した庫内の清掃や容器、器具等をしっかりと殺菌洗浄することで予防する。

火落ち菌は小さいものでも長さ1.5ミクロン、幅0.7ミクロン以上ありますので0.45ミクロン以下の濾過機を使用すれば、とりあえず除去できると思いますが通り抜ける火落ち菌もいれば、濾過機が詰まるかも知れません。

しかし濾過機の先のホースや器具に付着していたら何の意味もありませんのでご注意ください。万が一火落ちしてしまった場合は直ちに火入れ殺菌を行い、すぐにその酒を使用しない場合には醪に添加して酵母の還元力を利用して脱臭もできるが、税務署への申告が必要です。

火落ち酒の処理矯正には柿渋とゼラチンによる滓下げをするかコポロックを使用する。酸臭がひどい場合はMC炭などを併用し、酸度が高くなってしまった場合は除酸もできるが苦みや渋みが増加しますので他の清酒と混和しながら出荷する。

火落ち菌を防ぐためには低温貯蔵及び火入れを十分に行うことが大切です。清酒の品質を保つためにも低温貯蔵が蔵元だけでなく、流通業者や小売業者の方たちにも最近では徹底してきてますね。ありがたいことです。