toujinomichiの日記

酒造りの四方山話

黄麹菌の役割

黄麹菌とは蒸米に麹菌を繁殖させて酵素を生成したものです。この酵素の力を利用してブドウ糖やタンパク質を分解してできるのが清酒です。麹菌は空気中の酸素を必要とする微生物ですので、醪の中では生きていけませんが、麹から造られた酵素は残存してますのでこれを利用してアルコール発酵をしていきます。

清酒用の白米の中のでんぷんは水に溶けませんので、白米を洗って浸漬して蒸してあげなければ利用できません。この熱を加えて蒸したお米をα化と言います。この酵素作用を受けやすくなったα澱粉の長い鎖を麹菌の力で生成されたαアミラーゼが次々と分解していきオリゴ糖になります。

そしてさらにこのオリゴ糖をグルコアミラーゼの力で一つずつ分解してブドウ糖へと変化させます。このグルコアミラーゼ活性が強い麹ほどブドウ糖を生成する力が強く、酵母酵母の醗酵が盛んになります。

白米の中にはごくわずかですが、たんぱく質もあります。このたんぱく質を分解して、20数種類のアミノ酸が違う種類のアミノ酸のカルボキシル基とペプチド結合し、様々なアミノ酸を形成するのです。ですから出来上がるたんぱく質の種類は想像もできないほど多種類になります。

そしてこのたんぱく質を酸性プロテアーゼにより分解しペプチド結合してできたものをさらに酸性カルボペプチダーゼがペプチド結合したものをさらに分解してアミノ酸を生成します。このアミノ酸は、酵母の栄養源になるだけでなく、清酒の香気成分に変化する重要な存在ですが、多過ぎると味がクドクなり、雑味が多い清酒になってしまいます。

黄麹菌はデフェリクリシンというアミノ酸がつながったペプチドで鉄イオンと結合すると赤褐色のフェリクリシンという物質をつくるため酒造用水には鉄分が少ないことがいいのです。

この他鉄分は、アミノカルボニル反応をおこすブドウ糖アミノ酸を結合させ着色させることもあります。このアミノカルボニル反応とは砂糖を焦がしたキャラメルと同じ現象のことです。

この他チロシナーゼが多いと、酒粕が褐変してしまうこともあります。黄麹菌は、麹中にリホフラビン(ビタミンB²)やパントテン酸などのビタミン類を生産し、酵母の増殖に役立つのです。リホフラビンはしぼりたて新酒の青ざえした色の原因でもあります。この他、火落ち菌の生育因子であるメバロン酸も生成する有り難くない一つです。まだまだいろんな物質を生育してますが、黄麹菌はチアミン(ビタミンB¹)をたくさん生成してくれると、清酒中に酵母が作り出すピルビン酸を減少させる働きがあると言われてます。