toujinomichiの日記

酒造りの四方山話

ベテラン杜氏の昔話

新年明けましておめでとうございます。

酒造りとは昔から一麹、ニもと、三造りと云われていますが、現代の技術では、精米が一番大事ですが、洗米浸漬してからの蒸しが一番重要だと感じていますね。

しかも浸漬温度を低温にして一定の温度にしないと吸水歩合が安定しないため、米の温度と同じ位の6℃〜10℃位の低い洗米用水を用意します。

温度計の無い時代の酒造りでは、杜氏の経験とカンがすべてだと思われます。

現代では重さを計測して、麹の吸水歩合は30〜35% 掛け米なら25〜30%と米の品種やその年の天候により変わります。

昔の杜氏さんはよくポケットに手を入れたまま歩いていたらしいですが、これは温度計の無い時代では、自分の手が温度計の代わりのために手の感覚が鈍らないようにしてきたのでしょう。

そういえば、本当かどうか分かりませんが、蔵元と揉めた蔵人が辞める前に醪の中に嫌がらせのためにミカンを投げ入れたりとか、聞いたことがあります。

下り酒という言葉もありますが、関西の灘や伏見で出来た酒を江戸まで船に乗せて運送することなんですが、この時船員達が、酒樽から勝手に酒を少しずつ呑み、飲んだ分だけ水を足していたらしく、江戸に着いてからもさらにお店でも薄めたり、山椒や砂糖を入れたりと味を変えていたので(直し酒)と云われていたとか。

昔は、酒の比重を計る道具がないため毎日舌で舐めて確認するベロメーターでしたから酒母に含まれる乳酸の酸で歯のエナメル質が溶けて歯が欠けてしまったそうです。

なんとも壮絶な時代だったと改めて感じた話でした。