蔵元の酒税対策
遠い昔々、亡くなった先代の蔵元に聞いた税務署と蔵元の考え方の違いをご紹介したい
と思います。昭和30年ごろだったと思いますが、その当時も今もそうなのですが、税務
署の職員の方は、税務調査にくるときは、必ず二人以上できます。何故かというと、や
ましいことがある蔵元では、見られたくないものがあるもので、酒の量を測るのにタン
クの空尺を測り、酒の量が分かるのですが、税務署に内緒で酒を売りさばいていれば、
酒の量が少ないことがわかるため、税務署の職員がタンクに登るために、はしごを上る
ときに下にいる蔵の人にいじわるされてはしごを外される恐れがあるために、見張り役
として必ず二人以上でくるのだと聞きました。
あるとき、税務署の職員の方が、帳面と伝票と在庫の照らし合わせで、このお酒の一升
瓶が10本ほど足りませんが、どこにありますか?と尋ねると、〔おい!さっき隠した一升
瓶もとに戻しておけ〕と社員に命令すると、税務署の職員が、〔あ!やっぱりあってま
した〕と言うと、あれま~在庫が増えてしまいました。どうしましょう?
これは初歩的なミスですが、ずいぶんいじわるな税務署ですね。
しかしながら、造り酒屋に限らず、毎日在庫を数えて、在庫の点検をするのは小さい蔵元には
なかなか難しく、人手が足りないとたまにしか点検してないのではないでしょうか?
その他にも、いじわるな税務職員は、蔵の中を歩きながら、おおきなタンクの外側をゲンコツで
たたき、そのタンクが乾いた音がすれば、タンクの中は空っぽで、タンクが鈍い音がすれば
タンクの中に酒が入っていますので、帳面と照らし合わせて確認をします。
とにかく昔の税務調査は、蔵の中のすみずみまでのぞきまわり、風呂やトイレや
女性用ロッカーまで徹底的に、調査します。
そんないじわるな税務職員でも夜の接待は、芸者を呼んでの宴会でした。そこだけは
今現在とは違いますね。夜になると昔の人ですから、飲めや唄えの豪華なお食事会でした。
今ではお昼ご飯もそとに食べに行きますし、コピー機も持参してきますから徹底してきました
ね。確か30年位前の官官接待でノーパンしゃぶしゃぶがマスコミで報道されてから少なくなって
きたんでしょうね。