toujinomichiの日記

酒造りの四方山話

乳酸発酵食品

ここでは世界中の乳酸醗酵食品について調べてみました。

まず日本における野菜の醗酵から説明します。野菜の漬物を作るのに、まずは野菜にたくさんの塩をかけると浸透圧で塩が野菜の中に取り込まれ、野菜の水分を外に追い出します。

時間が立つと徐々に天然環境に存在する乳酸菌が侵入して野菜を酸性状態にして、その他の雑菌を淘汰してしまいます。このとき野菜に含まれる様々な成分を分解して各種アルコール類、アミノ酸や各種エステル(ふくよかな香り)を生成します。

野菜の漬物には、たくさんの種類がありますが、日本の塩漬け、糠漬けをはじめ、世界には朝鮮族のキムチ、ヨーロッパのザワークラウト、ピクルスなど乳酸発酵された野菜は、乳酸菌により乳酸をたくさん生成することで、酸性にし他の雑菌の増殖を抑えることで腐敗することがないのです。

南米にはキャッサバという芋がありますが、このイモ、実はシアン化化合物という猛毒を含んでいるためそのままでは食べられませんので、ここでも醗酵が深く関わってくるのです。幸いなことにこの毒素は水溶性のためにキャッサバをすりおろして醗酵させたものを乾燥させると大半の毒素はなくなります。

ちなみにこのキャッサバ、今はやりのタピオカの原料なんですね。はじめて知りましたわ。

次に魚介類の醗酵についても調べてみるといろんな面白い醗酵がありまして、なかでも日本という国には、海に囲まれた国であるため、他の国に見られないほど多くの醗酵食品があります。

魚介類の主な成分は、たんぱく質と油脂ですが、このたんぱく質は醗酵により、酵素の働きを利用してペプチド結合し多くのアミノ酸イノシン酸)を生成し旨みの素になってます。

魚介類の油脂も酵素により分解されて甘みのあるグリセリンと旨みのある脂肪酸に変化します。脂肪酸の一つであるコハク酸は貝類の旨みや清酒の旨み成分にも含まれてます。

次に魚介類の干物について説明していきます。干物とは魚の内臓を取り、塩分濃度を高くしてから、太陽の光と自然の風を利用して乾燥させます。このとき太陽の光は、多くの紫外線を放ち、魚介類が腐敗しないように殺菌してます。

この乾燥してる間に、たんぱく質酵素の働きを利用して旨みへと変化してくのですからありがたいことです。

こうしてできるのが、アジの干物やイワシの干物、アナゴの干物、イカの干物のスルメ、高級品のナマコの内臓からできるクチコなど多くの醗酵食品が日本には存在します。

中華料理では、干し貝柱や干しアワビ、サメの鰭の干物など一度乾燥させてから、アミノ酸を増やすという人間のおいしいものへの探求心により生み出されてきたことが、感じられます。

さらに江戸時代にさかのぼると、伊豆諸島では年貢として塩を収めていたため、干物にするための塩水を捨てることなく、繰り返し使用することで、塩水の中で乳酸発酵して独特の匂いと旨みを持ったクサヤの干物ができたのです。

その他の醗酵魚類では、イカの塩辛やタコの塩辛、高級珍味としてナマコの内臓の塩辛『このわた(海鼠腸)』たらの卵のたらこや唐辛子を使用した明太子、鮭の卵のすじこにいくら、ぼらの卵の塩漬け高級珍味の『カラスミ』など塩漬けにした魚介類を酵素の働きでたんぱく質アミノ酸に変化させて旨みを凝縮させているのです。常においしいものを食べたいという欲求からくる人間の凄さに敬服いたします。