toujinomichiの日記

酒造りの四方山話

孤独な杜氏

「和醸良酒」漫画夏子の酒でも出てくる言葉ですが、酒造りには何よりもチームワークが大切なんです。

酒造りは、複雑な工程の1つ1つを教科書通りにきちんとやってるつもりでも些細な工程の順番であったり工程の1つをうっかり忘れてしまったりしただけで、思った通りの酒にならなかったりと非常に難しいのです。

どうしても杜氏の考えた通りにはいきません。

だからと言って、余り注意してばかりですとヘソを曲げてしまう蔵人もいます。

昨今では、去年より施行されたパワハラに対する世間の目は厳しくなるばかりです。

中間管理職である杜氏は常に孤独なのです。

一昔前まで清酒業界は、徒弟制度が色濃く残る世界でした。

親方である杜氏の言う事は絶対で、口答え等することは許されませんでした。

杜氏が風呂に入れば、山助のごとく背中を流したりと新人の仕事でした。

杜氏の仕事には、夜中でも蔵の中の点検をしなければならない事があります。

そんな時、蔵の中は電気を付けるまで、真っ暗なのです。

それはもう怖い事、怖い事。

お化け屋敷以上のこと、間違いありません。

特に蔵元のご子息は、悪さをする度に蔵の奥に連れて行かれたそうです。

日本酒は、紫外線に当たると着色したり、日光臭が付いたりしてしまいますから、蔵の中というのは、出来るだけ暗くなるようにしてありますから、余計に暗くて怖いのです。

小さな子供にとっては、暗黒の世界に思える事でしょう。

大抵の蔵元の後継者は、怖い思いを味わったと聞いております。

ですから夜中の麹の仕事や、醪(もろみ)の点検作業等する時は、今だに怖い思いをしながら蔵の中に入らなければなりません。

それでなくても蔵の中に一人で、点検している時にタンクの中に落ちたら助かりません。

ものの数秒で、二酸化炭素中毒になり頭をハンマーで殴られたようになるらしいです。

全国に酒蔵は、1600社位あるそうですが、何年か毎に誰かしら亡くなることもあります。

酒蔵の仕事は、命がけなこともあるのです。

その上、杜氏とは、孤独との戦いでもあるのです。

今年の酒造りも、無事終了しました。